8月に『「中国側が領有権を主張する根拠となる資料」って何なのか?』と書きましたが、その回答に近いものが、白書として発表されました。情報戦略的な考えもあるのでしょうけど、まずは、「国家政府としての意見を判りやすく衆目に公開した」という点は評価されるべきと思いました。simpleで強い姿勢ですね。
で、読んでみて思ったこと。
まず、歴史が語られているのだが、『順風相送』(1403年)、『使琉球録』(1534年)、『中山伝信録』(1719年)等々の古文書の類は、何をアピールしたいのか? まさか、「これら古い文献の記載が領土としての歴史であり証拠」とか言わないよね(^^;; この後も、基づく事実のない主張ばかりが目立つ。逆効果だなぁ。
で、読み進めていくと、ようやく、それっぽいのにたどり着く。つまり、
- 1943年12月の『カイロ宣言』は、「日本が窃取した中国の領土、例えば東北四省、台湾、澎湖群島などは中華民国に返還する。その他日本が武力または貪欲によって奪取した土地からも必ず日本を追い出す」と明文で定めている。
- 1945年7月の『ポツダム宣言』第8条では、「『カイロ宣言』の条件は必ず実施されなければならず、日本の主権は必ず本州、北海道、九州、四国およびわれわれが定めたその他の小さな島の範囲内に限るものとする」と定められている。
- 1945年9月2日、日本政府は『日本降伏文書』において、『ポツダム宣言』を受け入れ、かつ『ポツダム宣言』で定めた各項の規定を忠実に履行することを承諾た。
- 『カイロ宣言』『ポツダム宣言』『日本降伏文書』に基づき、釣魚島は台湾の付属島嶼として台湾といっしょに中国に返還されるべき
ということなのだが、そもそも釣魚島は台湾の付属島嶼という部分の根拠が抜けているようだ。
また、日本側が主張するであろう「サンフランシスコ講和条約」については、
- 北緯29度以南の南西諸島などを国連の委任管理下に置き、米国を唯一の施政者と取り決めた『サンフランシスコ講和条約』において、その「南西諸島」には釣魚島は含まれていなかった
- 後に、琉球列島米国民政府は、勝手に委任管理の範囲を拡大し、中国領の釣魚島をその管轄下に組み込んだ
ということなのだが、サンフランシスコ平和条約において日本が放棄した領土に尖閣諸島は含まれていないのだから、中国領であるはずもないのでは? また、一般的・常識的に、地図上でも尖閣諸島は南西諸島の一部に見えます(外務省のWebサイトにもそう記載されている)し。
で、この後はまた、基づく事実のない主張ばかりが続くわけですよ。同じことを何度も…。国威掲揚のための演説や文章って、こんな感じなのかね? 宗教っぽい?
ん~、やっぱり、全体的に少々根拠に乏しく、説得力に欠け、無理を感じる。
領有権を主張し始めたのが、資源の可能性が発表された直後から(それ以前は人民日報にも「尖閣諸島は琉球諸島に含まれる」と記載がある)だったりするところも、単に主権を守るための主張ではないってことなので、うさん臭い。
また、中国も韓国も政権末期なので、外敵を作り、政府への支持を高めたい事情もわかる。
先ほどのTV番組での池上彰さんの言葉が、なかなか良かった。
「急激に大きくなった国は周辺の国とトラブルを起こす、ということを歴史は繰り返してきた。今まさに中国はその段階に達したといって良い。」
なるほど。日本もそうだったしね…。
軍事力や経済力ではなく、外交力・政治力でそうしたトラブルを解決するためには、まず、1人1人にそうした俯瞰視点の必要を強く感じた。
[元記事]
・中国、「釣魚島は中国固有の領土」白書を発表–人民網日本語版–人民日報 [2012/09/26]